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最近、「新幹線通勤」という言葉を新聞やニュースで見かけることがあります。文字通り、新幹線を使って職場に通勤することを意味します。この言葉が誕生したのはバブルを迎える前の、1983年に新幹線専用の定期券「FLEX(フレックス)」が発売された頃です。
当時、土地価格は永遠に上がり続けるという「土地神話」のもと、金融緩和によって余剰となった資金が土地投機に集まり、都市部の土地や住宅価格が急激に上昇しました。サラリーマン世帯にとって東京近辺でのマイホーム購入が非常に難しくなるなか、注目を集めたのが住宅価格の上昇が波及していない地域、リーズナブルな価格で購入できるエリアからの新幹線通勤というスタイルです。対象となったのは高崎や深谷、那須塩原や熱海、三島などです。満員電車にもまれることなくゆっくり座って通勤できるメリットに加え、1989年には通勤手当の非課税限度額が引き上げられたことも、新幹線通勤の拡大には追い風となりました。
バブル期の「新幹線通勤」は東京都心部への通勤を前提として、なおかつ夢のマイホーム購入を叶えるための選択肢のひとつだったといえるでしょう。
一方、昨今の「新幹線通勤」は、検討する理由や背景が違っています。コロナ禍によってテレワークが日常化し、都心のオフィスまで毎日通勤しなくてもいい働き方が登場したからこそ、選択肢として注目を集め始めているのです。
オフィスに出勤する機会が週に1回程度になれば、通勤時間が延びても我慢できなくはありません。都心に近い場所で狭いマイホームで我慢するよりも、神奈川、埼玉、千葉などの郊外部の広めの住宅を選択するケースが増えているのはそのためです。
その考えをさらに発展させれば、新幹線を利用するエリアで住まいを手に入れて、都会では手に入れられない別の価値を見いだす。そんなスタイルを実現するための手段として「新幹線通勤」が、見直されているのです。
こうしたトレンドを踏まえ、自治体のなかには定住人口増加をはかるために、新幹線通勤を始める方を対象にした補助金制度を設けている市町村もあります。たとえば埼玉県熊谷市では転入日に40歳未満、5年以上居住の意志がある、住宅を購入するなどの条件をクリアする人に(1か月の新幹線定期の額-新幹線にかかる通勤手当)×2分の1(2万円上限)を支給する制度を設けています。
通勤手当の支給額や通勤日数も企業によっても違うため、メリットを得られないケースもあるかもしれません。場合によっては、定期券を購入するだけの利用頻度が発生しないこともあるでしょう。自分の勤務体系や通勤頻度を把握したうえで、こうしたサポート情報を集め選択肢を広げ、判断する価値はあるはずです。