主に「不動産」と「経済」の2つのテーマにフォーカスし、最新情報をわかりやすくお伝えします。
働き方の変化の流れの中で登場したのが「ワーケーション」という考え方です。観光地やリゾート地などに滞在しながら仕事をする、ワークとバケーションがひとつになった言葉がワーケーション。都会では得られない環境に身を置き、余暇を楽しむことで心身共にリフレッシュして新しい発想やビジネス開発につなげていく・・・。そんな目的で、試験的に導入する企業も増えています。ワーケーションの実証実験(株式会社NTTデータ経営研究所、株式会社南紀白浜エアポート、TIS株式会社の共同実施)では生産性が20%以上向上し、ストレスは37%低下したという結果も発表されています。
たとえば、和歌山県白浜町にサテライトオフィスを設置した大手システム開発企業や、大分県別府市にワーケーションスペースを開設したIT企業など。地方のIT事業ニーズの研究開発など、新規ビジネス開拓を模索している企業も少なくありません。
こうしたリゾート地だけがワーケーションの対象エリアではありません。仕事と余暇、さらに農業を組み合わせた「アグリワーケーション」も広がりを見せ始めています。
農作業はストレスを解消し、高い幸福感をもたらすことが実験によって検証されています。東京都内でも目黒区や品川区の区民農園の応募が増加しているようです。確かに、最近は筆者のまわりでも、市民農園や郊外の貸し農園で野菜などを育てる人を見かけるようになりました。
農作業であれば、温泉地やリゾート地ではなくても、幅広い地域で実現できます。 高い癒し効果を持つ農作業をワーケーションにプラスすることで、ストレスを軽減し生産性を高める効果が期待できるのです。上記の新幹線通勤エリアと組み合わせば、アグリワーケーションが可能なエリアは大きく拡がる可能性があります。住宅を手に入れたうえで、効率よく仕事をこなし、農作業を含めた余暇を満喫する。そんな暮らし方も夢ではありません。
コロナ禍は経済的な打撃をもたらした一方で、職や住にも今までになかった影響を与えています。「癒し」や「休息」、「子育て」や「安息」の場としての役割を担っていた「住まい」の中に、「仕事」が入り込む家庭も増えました。
これまでの住まいの役割に加えて「働く」、「遊ぶ」、「楽しむ」といった機能を持つ家が必要とされているようにも思います。住まい選びの基準にも変化が求められる時代なのだと思います。通勤利便性を重要視していた過去の価値観にとらわれずに、「今」にふさわしい住まい選びを考えてみては、いかがでしょうか。
文:井村 幸治(フリーランスエディター&ライター)
2021年7月掲載
フリーランス&ライター
井村 幸治 いむら こうじ
フリーランスエディター&ライター。1964年、和歌山県生まれ。リクルート(現リクルート・ホールディングス)にて不動産、ブライダル領域の編集に長年にわたって携わる。その後フリーランスとして住宅、都市開発、メディカル、ブライダルなど様々な分野で取材執筆活動を行う。東京⇒名古屋⇒大阪の転居を2回ずつ経験したことで、各都市の住宅事情にも精通。日本各地への取材、旅行経験も豊富。現在は大阪府吹田市「千里ニュータウン」在住。